マンションに関する裁判事例





【総会】共有者の代表無届け理由に「総会決議無効」(2010.6)

修繕積立金値上げの総会決議に納得しない区分所有者が、共有区分所有者の議決権行使に関する事前届出未提出等を理由に決議無効確認等を求めていた訴訟の控訴審判決が6月22日、東京高裁であった。
事前届出の規定は標準管理規約と同様だが、裁判長は「共有区分所有者の議決権行使者は共有者間の協議で定められていれば足りる」と指摘し、請求を棄却した。

規約の議決権の規定では標準管理規約同様、一住戸を数人で共有している共有区分所有者の場合「議決権行使者一人を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開催までに理事長に届け出なければならない」としている。

控訴審判決で、裁判長は「届出による証明方法によらずとも、共有区分所有者のうち当日出席組合員、委任状および議決権行使書に署名押印した組合員が、経験則上、共有者間で有効に選任された議決権行使者であると認められる」とし、「これらの者を有効な議決権行使者と判断して出席組合員総数に算定しても違法ではない」と述べ、総会開催時における議長の適法成立宣言や総会決議を有効と認めた。

[マンション管理新聞より]
(2010.7)
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【総会】非区分所有者が理事長を務めた期間の決議について

上の訴え(共有者の代表無届け理由に「総会決議無効」)では、もうひとつの訴えがあった。
役員資格を「現に居住する組合員」と規定している同管理組合において、かつて非区分所有者が理事長を務めた時期があり、原告が当時の職務上の一切の行為の無効を主張し、管理組合が二年後の総会で当時の決議に対する追認決議を行った点について、裁判長は追認決議の有効も認めた。

[マンション管理新聞より]
(2010.7)
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【管理費等】事務所使用は管理費2倍→東京高裁で無効(2016.5)

「住戸を他の用途に使った場合は理事会決定で管理を増額できる」と想定された管理規約に基づき、理事会が事務所使用している居室の管理費を住戸の2倍に決めていたケースで、管理規約の有効性が争われた訴訟の控訴審判決が2016年5月、東京地裁で言い渡されている。
裁判長は、規約の無効を言い渡した一審判決を大筋で支持。理事会決定による「2倍ルール」は区分所有者間の衡平を定めた区分所有法30条3項の規定に反し、無効だと結論付けた。判決は確定している。

<経緯>
事件の舞台になったのは東京都新宿区のマンション。1985年入居で、管理費の増額を理事会で決められる旨の条項は当初から設けられていた。
この規定に基づき理事会は89年、事務所使用している場合の管理費を通常の2倍にすると決め、総会で承認を得た。
2015年12月の東京地裁判決は、管理規約は無効だと判断し、管理組合に過払い分の約409万円の支払を命じた。
<考察>
裁判では区分所有法30条3項に基づき、管理規約の「衡平性」について判断が加えられた。
判決では、住戸と事務所の間に共用部分・専有部分の利用状況に大きな差は無い、と結論付けている。少なくても管理費に2倍の差をつけるような状況にはない、という判断だ。
こうした利用状況に加え、「理事会決定が書面化されていない」といったルールの周知度などの「その他の事情」を考慮し、ルールは無効だと判断した。
<参考>
区分所有法30条

☞参考 マンション管理新聞 2017年1月5日号
(2017.1)
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【管理費等】管理費等の時効について(2004.4)

【管理費等】非居住区分所有者に特別管理費納入義務・役員被選任資格無し(2009.11)

全121戸のうち、43戸が非居住区分所有者のマンションで、1階店舗部分を2戸所有する区分所有者Aが、非居住区分所有者が役員になれないことや、特別管理費の納入義務などを定めた管理規約の無効を求めて管理組合を提訴した事案で、1審・福岡地裁判決はAの無効確認を棄却、2009年11月最高裁でも棄却され判決は確定した。

判決趣旨
裁判所は、非居住区分所有者に対して特別管理費を課すことが公序良俗に違反せず、区分所有法31条1項(一部の区分所有者のみ特別の影響を与える)の適用がない理由として、①非居住区分所有者に対しては居住区分所有者に比して通信費等が余分に発生する ②一般にマンションの管理については居住区分所有者が非居住区分所有者に比して大きな貢献をする ③本件マンションでは居住区分所有者のみが管理組合の役員としてその運営に携わり、マンションの住環境を良好に保つという責任を負う ④非居住区分所有者は居住区分所有者の貢献を前提として専有部分を使用収益している面がある、とした。

役員の被選任資格を非居住区分所有者から奪ってしまう規約の有効性については、①管理組合役員の職務がマンションの管理全体に及ぶ重要な職務であることに照らせば、緊急事態への対応や理事会への出席等の観点から、被選任資格を居住区分所有者に限定する必要性・合理性がある ②役員の被選任資格は専有部分の財産権自体に直接の影響を与えるものではない、とした。

コメント
(N弁護士)裁判所が示した理由で本当に適法と言えるのかどうかが疑問だ。
非居住区分所有者で役員になりたい人は、緊急事態になったら飛んで出てくるだろうし、出席もするでしょう。役員になりたい非区分所有者には、この必要性・合理性はまったく当てはまらないのではないか。
判決は財産権自体に直接の影響を与えるものではないと言っているが、区分所有建物において、自分の財産を管理しようと思ったら、管理組合に関わるしかないわけで、管理組合に関わることの一手段を奪われる、理事として議論をするとか、議題を設定するとか、本当に財産権自体に影響を与えないのか。

[マンション管理新聞 2010年第822号より]
(2010.12) マンションに関する裁判事例TOPに戻る

【管理費等】前区分所有者が滞納した駐車場使用料について特定承継人は責任を負うか(2012.11)

区分所有法第8条(特定承継人の責任)では、「前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる」とし、区分所有法第7条1項に定められた「規約若しくは集会の決議に基づき有する債権」について前区分所有者同様に、特定承継人にも請求できる旨規定されています。

管理費・修繕積立金は、当然これに該当します。
「遅延損害金」については、この債権に含まれない、と主張される方がいますが、条文(7条1項)を読む限り、そのような解釈には無理があります。

「バルコニー使用料」や「専用庭使用料」のように、専有部分に付従する部分の使用料については、これに含まれると解されています。
では「駐車場使用料・駐輪場使用料」など、別途契約をすることによって発生する費用についてはどうでしょう。これについては含まれないという見解がありますが、裁判所の判例(東京地裁平成20年11月27日判決)特定承継人への請求が認められました。

☞参考:マンション管理オンライン>弁護士平松英樹のマンション管理論
(2014.1) マンションに関する裁判事例TOPに戻る

【管理費等】前区分所有者が滞納した水道光熱費について特定承継人は責任を負うか(2009.7)

管理組合が、前区分所有者が滞納していた管理費・積立金のほか上下水道料金(※このマンションは水道局と組合との一括契約)について、買受けた新区分所有者、また中間取得者に対して支払いを求めていた裁判で、大阪地裁はこれを認めました(大阪地裁平成21年7月24日判決)。
☞参考:国民生活センター相談情報部発行「暮らしの判例」

水道料金等および中間取得者については先例があり(大阪地判昭和62年6月23日判例タイムズ658号)、こちらは水道光熱費については本判決同様に区分所有法7条の債権に含まれるとされましたが、中間取得者については支払い義務がないとしています。

水道光熱費については、先例も本判決も、同法7条の文言どおり規約で定められていることを根拠に請求を認めています。
(2014.1) マンションに関する裁判事例TOPに戻る

【管理費等】売買等の中間取得者は特定承継人にあたるか

1987年の判例で、判決理由に旧区分所有法第15条を持ち出し、特定承継人にあたらない、としたものがありますが、以降の判決では特定承継人にあたる、とされています。
・大阪地裁 1999年11月24日判決
・福岡地裁 2001年10月3日判決
・東京地裁 2008年11月27日判決
大阪地裁 2009年3月12日判決
主に次のようなものが判決理由となっています。
  1. 区分所有建物の管理費等は、建物等の全体の価値に化体しており、中間取得者も建物に化体した価値に対応する利益を享受していること。
  2. 区分所有法8条の文言は「区分所有者の特定承継人」とするのみで、現に区分所有権を有している特定承継人に限定していないこと。
  3. 請求された現在の所有者が、訴訟中や敗訴判決確定後に、区分所有権を譲渡すれば、中間取得者としてその責任を免れることになり、管理費の負担者側の実質的保護に欠けることになりかねないこと。

☞参考:アヴァンセの企業法務インサイト弁護士ブログ※2022年現在ページ無し


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【管理費等】滞納者に対する専有部分の使用禁止は認められるか(2002.5)

1991年から2000年まで計1,348万円の未収のある区分所有者に対して、管理組合が大阪地裁に ①専有部分の使用禁止 ②滞納管理費の支払い を求めて提訴した事件で、大阪地裁では容認判決となりましたが、同一事件の大阪高裁では次により否認判決が下されました(2002.5.16大阪高裁)。

  1. 1,348万円の滞納は、期間及び金額の双方で著しいものがあるとして「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たることは認められる。
  2. しかし、専有部分の使用を禁止することにより、滞納者が滞納管理費を支払うという関係にあるわけではない。滞納と使用禁止とは関連性がないので、滞納者に対して使用禁止を認められるべきものではない。
  3. 滞納に対して、区分所有法59条の競売請求は認める実益があり、要件をみたす場合は競売請求をすることができる。

☞参考:福管連>業務知識・判例資料
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【管理費等】管理費等の負担割合に関する管理規約の改正と特別の影響について

規約の設定、変更、廃止は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の特別多数決議により行うことができますが、それにより一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、その区分所有者の承諾を得なければなりません(法31条1項後段)。
特別の影響がある場合かどうかは、規約の設定等の必要性ないしこれにより区分所有者全員が受ける利益と比較して、一部の区分所有者の受ける不利益が受忍限度を超えているか否かという観点から決することになります。

管理費等の負担割合は、原則として共用部分の持分割合によりますが(法19条)、規約で別段の定めをすることができます。

全員の合意のもとに、特定の区分所有者に特別に利益を与える趣旨でその者の負担割合を低く定めた場合に、その利益を失わせることは、特別の影響を及ぼすことになると考えられます。

法人組合員と個人組合員の負担割合に差を設けることは、公序良俗に違反し、無効であるとした判例があります(東京地裁1990年7月24日判決 参考「管理見積.com」判例紹介ページ)。

分譲時、一階部分の管理費が、二階以上と比較して低額であった場合に、これを二階以上の額と同額に変更することは「特別の影響を及ぼすとき」にあたらないとした判例があります(東京地裁2003年3月30日判決 参考「倉橋マンション管理士事務所」HP内資料)。

☞参考:高層住宅管理業協会「マンション管理に係る紛争事例集」
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