マンションの大規模修繕工事



大規模修繕工事とは

大規模修繕工事とは、一定期間の経過ごとに行う外壁・防水・設備等の複合的な工事で、工事範囲が全体に及び、相当の費用と時間をかけて実施するものです。

一般的には足場を必要とする程度の工事をいい、これを必要としない程度の鉄部塗装工事などは大規模修繕工事とはいいません。

足場建設は工事費用の中で大きなウエイトを占めますので、足場を要する工事(外壁のタイルやシーリング補修など)や足場があった方がやりやすい工事(各戸のバルコニー防水など)をひとまとめに行います。

足場

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各部位修繕周期の目安

修繕部位ごとの修繕周期目安は以下のとおりです。

修繕周期目安
参考:(旧)住宅金融公庫発行「大規模修繕マニュアル」
(2009.7)
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長期修繕計画書とは

長期修繕計画書とは、マンションで今後どのような工事が必要となるか、大体20年~30年先までシミュレーションしたもので、次の事柄について計画されたものです。

 ・修繕時期 いつ頃修繕するのか?何年ごとに行うか?
 ・修繕項目 どの部分を修繕するのか?
 ・修繕方法 どのように修繕するのか?
 ・修繕費用 どのくらい費用が必要になるのか?

標準管理規約では
標準管理規約では、「長期修繕計画書の作成又は変更に関する業務」を管理組合の業務として明記しています。(32条1項二)
コメントでは、長期修繕計画書の最低限必要な条件として次の項目をあげ、また長期修繕計画の内容については定期的(おおむね5年程度)ごとに見直しすることが必要であると述べています。

 ・計画期間が25年程度以上であること。なお、新築時においては、計画期間を30
  年程度にすると、修繕のために必要な工事をほぼ網羅できることとなる。
 ・計画修繕の対象となる工事として外壁補修、屋上防水、給排水管取替え、窓及
  び玄関扉等の開口部の改良等が掲げられ、各部位ごとに修繕周期、工事金額等
  が定められているものであること。
 ・全体の工事金額が定められたものであること。

マンション管理センターによる作成
(財)マンション管理センターでは、標準的なマンションを設定して定めた長期修繕計画を基本に、個々のマンションの規模や形態等により補正するといった作成方法で、長期修繕計画書を作成しています。
 【1棟あたり費用】 登録管理組合 1万3千円 非登録管理組合 2万円

(2009.7)
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大規模修繕工事に向けて①~修繕委員会の設置~

大規模修繕工事に向けての検討は、複数年度に渡りますが、年度ごとにメンバーが交代してしまう理事会では、継続的な審議ができません。
また、専門的な知識が求められる事項も多く、設計事務所や施行会社等との接触も多くなりますので、通常の理事会業務と並行して行うことは大きな負担となります。

そこで、理事会とは別に、専門委員会として「修繕委員会」の設置が望まれます。

修繕委員会

標準管理規約では
標準管理規約では、専門委員会について次のように定めています。

第55条(専門委員会の設置)
理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。
2 専門委員会は、調査又は検討した結果を理事会に具申する。
第55条関係コメント
①専門委員会の検討対象が理事会の責任と権限を越える事項である場合や、理事
 会活動に認められている経費以上の費用が専門委員会の検討に必要となる場合
 運営細則の制定が必要な場合等は、専門委員会の設置に総会の決議が必要とな
 る。
②専門委員会は、検討対象に関心が強い組合員を中心に構成されるものである。
 必要に応じ検討対象に関する専門知識を有する者(組合員以外も含む。)の参加を
 求めることもできる。

第55条2項で「調査又は検討した結果を具申する」とありますが、すなわち専門委員会は理事会の諮問機関となります。
あくまでも決定権限は理事会にあり、委員会は理事会の下部組織となります。

修繕委員会運営細則(例)

第1条(総則)
この細則は○○管理組合の管理規約に従い、大規模修繕工事の実施に関し理事会を補佐し助言する諮問機関の設置・運営に必要な事項を定めることを目的とする。

第2条(名称)
諮問機関の名称は、○○管理組合修繕委員会(以下「委員会」という。)とする。

第3条(目的)
委員会は、大規模修繕工事に関する事項について調査・協議し、大規模修繕工事の円滑な実施に向けて理事会を補佐し、必要な答申を行うものとする。

第4条(委員)
委員会の委員は組合員をもって構成する。

第5条(役員)
委員会は、委員の互選により委員長、副委員長を各1名選出するものとする。

第6条(任期)
委員の任期は第○回大規模修繕工事完了までとする。但し、管理組合が決定したアフター点検検査には立会うものとする。

第7条(委員会)
委員会は、委員長が必要に応じて招集することができる。
2.委員長が必要と認める場合には、前号により招集された委員会に専門的知識を有する者に対し、助言、指導その他の援助を求めたりすることができる。

第8条(経費)
委員会の運営に必要な経費は管理組合が負担する。
2.前項の経費の支出にあたっては、その使途、金額、支払先等について事前に理事会の承認を得るものとする。

(2009.7)
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大規模修繕工事に向けて②~設計監理方式と設計施工方式~

大規模修繕工事には、大きく分けて次の3つの業務があります。
①建物診断・改修設計 ②改修工事 ③工事監理

設計を「図面を描くこと」と思っている方は多いと思いますが、この場合の設計とは、「工事の内容を決めること」です。

工事の発注方式は、設計事務所などのコンサルタントを起用し、施工と設計・監理業務を分離して行う「設計監理方式」と、①~③を一括して施工会社に依頼する「設計施工方式」があります。

依頼方式  ※管理会社の活用は、委託管理会社が工事監理業務の請負が可能な場合

設計監理方式の場合、工事内容・金額について施工会社以外の第三者のチェックが入りますので、無駄な工事の発注をする心配が無くなり、全体的な工事金額を抑えることが期待できます。また、組合員に公明性・公平性をアピールでき、業者選定の際など合意形成が得られやすくなるでしょう。

ただ、戸数が少ない小規模マンションでは、コンサルタント業務費の1戸あたりの負担が大きくなってしまいます。
しかし、小規模マンションは区分所有者が少ない分、合意形成が得られやすいというメリットがありますので、管理組合で協力し、皆さんの合意が得られれば専門家の採用を最小限に抑えることができるでしょう。
(2009.7)
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