マンションのアフターサービス



アフターサービス規準とは

アフターサービス規準とは、民法上の瑕疵担保責任とは別に、住宅に一定の不具合が発生した場合に、瑕疵の有無を問わず、売主または施工業者が無償で補修するための規準を定めたもので、昭和51年12月11日付の建設省計画局長・住宅局長連名の通達に従い、当初業界7団体によって作成されました。

ここでいうアフターサービスとは、売主(施工業者)の無償補修を契約の一部として約するもので、あくまでも契約上の責任です。
契約をするか否かは任意であり、民法等の瑕疵担保責任のように法律上義務付けられているものではありません。
しかし、物件の補修規準を明確にし、住宅購入者の保護を図るという観点から一般的に広く活用されています。

品確法の施行に伴う改定
平成12年4月に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行され、住宅の瑕疵のうち「構造体力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分」については、責任期間を引渡しから10年にするなど、瑕疵担保責任の強化が図られました。

これを機会に、整合性をとるべく、社団法人不動産協会によって、「中高層住宅アフターサービス規準」の改定が行われました。
尚、平成13年4月に不動産協会と統合した旧日本高層住宅協会策定のアフターサービス規準は、表向きは異なっていましたが、実質的には同一の項目・年数となっていたことから、平成14年度よりこの規準に一元化されました。

住宅品質確保促進法との関連で変更した箇所
1.構造耐力上主要な部分(基礎・柱・梁・耐力壁・床・屋上・屋根)のコンクリート躯
  体の亀裂・破損                      10年間(旧規準:2年間)

2.雨水の浸入を防止する部分(a.屋上・屋根・ルーフバルコニー b.外壁 c.屋上
  屋根・外壁開口部に設ける戸、枠その他の建具 d.雨水排水管)からの雨漏り
                  10年間(旧規準:aのみ10年間、その他は7年間)
他の変更箇所
1.ガス配管の破損                       5年間(旧規準:2年間)
2.各部位の塗装のはがれ 塗装吹付の欠損        2年間(旧規準:1年間)
3.室内建具、建具金物、造付家具、室内床仕上げ    2年間(旧規準:1年間)
4.設備機器(照明器具、換気扇、バランス釜、湯沸かし器、暖冷房機器等)
            2年間。但し機器本体は保証書の期間による(旧規準:1年間)
新たな項目
1.機械式駐車場の機能不良                         2年間
2.情報通信設備(ISDN、電話線、LAN等)の取付不良・機能不良   2年間

漏水
中高層住宅アフターサービス規準(様式A:工事種目別)
中高層住宅アフターサービス規準(様式B:部位別)

参考:社団法人不動産協会
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アフターサービス責任と瑕疵担保責任の違い

瑕疵担保責任は法定責任である

瑕疵担保責任とは売買の対象物件に隠れた瑕疵が存在する場合に負わなければならない民法上の法定責任であり、「売買契約において、売主は買主に対して、買主が瑕疵の事実を知ったときから1年は取引物件の瑕疵担保責任を負う(民法570条)」とされています。

尚、宅建業法では「宅建業者が自ら売主となる売買契約において、目的物の引渡しから2年は瑕疵担保責任を負う(業法第40条)」とし、売主が引渡しから1年しか責任を負わない、など、買主に不利な特約をすると、その特約は無効となり民法第570条の規定が適用されるようになっています。

民法の規定が任意規定(当事者間の合意によって変更が可能)であるため、弱者である買主が不利な条件を突きつけられるケースを想定し、消費者保護をはかっているものです。

一方アフターサービス責任は、契約で定められることにより生じる責任であり、定めがない限り、売主は負担する必要がありません。

売主に請求できる内容について

瑕疵担保責任の内容は「隠れた瑕疵があった場合に買主は損害賠償請求(損害賠償請求権)ができ、また、その瑕疵のために契約目的を達成することができない場合は解除することが出来る(解除権)」となっています。(民法570条・566条)

アフターサービス責任は「欠陥箇所の補修を無料で行う(修補請求権)」となっています。

瑕疵担保責任は無過失責任である

瑕疵担保責任は無過失責任(過失が無くても責任を問える)です。
アフターサービス責任の場合は契約により定まり、天災等による場合は売主は責任を負わないとされています。

権利を行使できる期間について

瑕疵担保責任の場合は、買主は瑕疵を知った時から1年以内に権利を行使しなければならないが(民法570条、566条3項)、アフターサービス責任の場合は、権利を行使できる期間が契約によって定められます。
尚、アフターサービス期間の始期(起算日)は次に定める通りとし、具体的な適用についてはアフターサービス規準にもとづいて行います。

①屋上・外壁等の雨漏り、内外装・基礎等構造耐力上主要な部分の亀裂・破損
 →建設会社から分譲会社に建物が引き渡された日
②共用部分について
 →最初に使用を開始した日
③その他の部分
 →当該物件の引渡しの日

瑕疵担保責任との違い
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耐震偽装問題と瑕疵担保責任の関係

前述のとおり、瑕疵担保責任とは、売主が法定で責任を負うものであり、無過失でも責任を負うものです。
耐震偽装マンションの買主は、マンションに住むという契約の目的を果たせなくなったのであるから、解除権を行使することができ、また損害賠償請求ができるのではないだろうか?
本来はそうなのですが、先の耐震偽装事件では、売主が瑕疵担保責任を果たせないまま倒産したため、買主が二重のローンを背負ってマンションを建替えざるを得ないなど、被害が拡大してしまいました。
そのため、保険制度の利用などを売主に義務付け、10年間の瑕疵担保責任を確実に履行できるようにすべきである、という議論が高まりました。

売主の瑕疵担保責任を補強するために、現行でも保険制度が用意されています。
最大手は財団法人住宅保証機構が運営する住宅性能保証制度ですが、民間の保証会社もいくつか存在します。
制度の内容はどこでも似たようなもので、10年間の保証期間中は売主が負担した修理費用の8割程度が保険でまかなわれます。
もし売主が倒産していたら、費用の95%が買主に直接支払われる仕組みです。
保証機構や保証会社では保険を付ける為の条件として、工事中の現場検査などを行っています。
しかし、まだ利用率はかなり低いのが現状となっています。

姉歯氏

参考:日経TRENDY記事ページ
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