マンションの消防設備 2


スプリンクラーについて

スプリンクラー設備は、防火対象物の天井又は屋根下部分に配置されたスプリンクラーヘッドにより、火災感知から放水までを自動的に行う消火設備で、水源、加圧送水装置(消火ポンプ)、自動警報装置(流水検知装置、表示装置、警報装置等)、スプリンクラーヘッド、送水口、配管・弁類及び非常電源等から構成されています。
<スプリンクラー系統図>
マンションスプリンクラー系統図
画像/東京防災設備保守協会※2022年現在サイト無しより
自動警報装置
自動警報装置

設置基準について
消防法施行令第12条(スプリンクラー設備に関する基準)にあり、マンションでは11階以上※に設置が義務付けられています。

(※消防法第8条では、高さ31mを超える建築物を特に「高層建築物」と定義していますが、これは、建物階数でいうと11階建て以上の建物ということになります。 そして、この11階以上の高層階では、消火活動や避難活動等の難度が高まる(消防はしご車の届く31m程度との関係)等から、消防法上も、無窓階や地階同様、一般階以上に厳しい規制が敷かれています。

ただし、省令(旧220号特例)により、設置を免除されている場合もあります。
☞ 詳細参考 マンション管理支援協議会HP>共同住宅用スプリンクラー設備 

設置に関する技術上の基準については、平成18年消防庁告示「共同住宅用スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準」により、詳細に定められています。一例を記載します。

  • スプリンクラーヘッドは、閉鎖型スプリンクラーヘッドの技術上の規格を定める省令(昭和40年自治省令第2号)第2条第1号の2 に規定する小区画型ヘッドのうち、感度種別が一種であるものに限ること。
  • 制御弁は、住戸、共用室又は管理人室ごとに、床面からの高さが0.8m以上1.5m以下の箇所に設けること。
  • 制御弁は、パイプシャフト、パイプダクトその他これらに類するものの中に設けるとともに、その外部から容易に操作でき、かつ、みだりに閉止できない措置が講じられていること。
  • (音声警報装置)メッセージは、男声によるものとし、火災が発生した場所、避難誘導及び火災である旨の情報又はこれに関連する内容であること。

☞ 全文参考 マンション管理支援協議会HP>共同住宅用スプリンクラー設備 

スプリンクラーの種類
マンションに設置されているスプリンクラーは、閉鎖型(水の出口が常に閉じられているもの)の湿式(平常時、配管内に水が充満されている方式)です。

☞ 種類の詳細・作動の流れについて 東京防災設備保守協会>スプリンクラー設備※2022年現在ページ無し
(2013.11)
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消火水槽・補給水槽・呼水槽について

消火設備に関する水槽は3つあります。
  • 消火水槽 消火ポンプで加圧送水する放水用の水が入っている一番大きな水槽
  • 補給水槽 屋上等の建物上部から重力で水を落として配管内に加圧充水するための水槽
  • 呼水槽 消火ポンプ―地下式消火水槽間の配管を水で満たして消火ポンプが水を引っ張れるようにするための水槽
 ※配置は「スプリンクラーについて」参照

消火水槽とは
消火に用いる水の大部分が入っている大きな水槽で、大きく地下水槽と地上にある圧力水槽に分けられます。
地下にある場合は「フート弁」という、放水時にカパッとあく、フィルター付きのぶっといストローを通してぐんぐん吸います。

呼水槽とは
地下に消火水槽がある場合のみ設けられています。

青木防災株式会社|「補給水槽」と「呼水槽」の違いを解説
  株式会社AMU冷熱|フート弁とチャッキ弁の違いは何?
(2023.3)
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駐車場用消火設備について
(水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン・粉末)

消防法施行令第13条において、地階又は2階以上の階で200㎡以上、1階で500㎡以上、屋上部分で 300 ㎡以上、昇降機等の機械装置で車輛を駐車させる構造で収容台数が 10 台以上の駐車場においては、次のうちいずれかの消火設備を設置することが規定されています。
  • 水噴霧消火設備
  • 泡消火設備
  • 不活性ガス消火設備
  • ハロゲン化物消火設備
  • 粉末消火設備

一般に、常時人が出入りする自走式駐車場では泡消火設備が使われることが多く、常時人がいない機械式駐車場などでは、不活性ガス消火設備等のガス系消火設備が使用されています。
☞ 全文参考 総務省消防庁HP内トピックス 

第三種移動式粉末消火設備
屋外や開放式の屋内駐車場では、第三種移動式粉末消火設備が多く使用されています。
第三種とは、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備および消火器等を除く消火設備の総称で、移動式とは、煙が充満しない等、固定式消火設備を設置しなくても、人が安全に消火作業ができる防護対象などに設置される、ホース架式またはホースリール式の消火設備です。   

☞ 参照 ㈱立売堀製作所HP内ページ
(2013.11)
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自動火災報知設備について

自動火災報知設備は、火災発生前の異常現象(煙・炎の発生、異常な温度上昇)をとらえて警報を発し、火災の予防、早期発見に役立てるための設備です。
設置基準は消防法施行令21条に定められていますが、マンションでは一般的に、法令化された総務省令第40号(旧消防法施行令第21条の共同住宅特例基準220号通知)に対応し、「共同住宅用自動火災報知設備」に適合した基準で設置されています。
当該基準を適用する共同住宅等は「特定共同住宅等」と呼称されますが、適用のための条件が消防庁告示2号・3号で定められています。
☞ 参考 ホーチキ㈱>消防法改正・関係法令等のまとめ 

消防法施行令21条
述べ床面積500㎡以上のマンションには設置を要します。
☞ 詳細条件参考 能美防災㈱>警報設備早見表 

総務省令第40号
共同住宅用自動火災報知設備(もしくは住戸用自動火災報知設備&共同住宅用非常警報設備)の設置が可能です。
従来のものと、・外から試験ができる ・発信機と表示灯が不要 ・火災の際にはベルではなく、共用部のスピーカーと、インターホンと、戸外のドアホンが音声警報鳴動する、などの違いがあります。
☞ 参照 能美防災㈱>総務省令第40号適用設備早見フローチャート

基本的な設備概要
自動火災報知設備は、感知器が熱や煙を感知し、受信機に火災信号などを送り知らせます。 受信機は警報を発し、火災地区を表示し地区ベルなどを鳴動させ建物内にいる人に火災の発生を知らせます。
自動火災報知設備
感知器
熱感知器、煙感知器があります。熱感知器には、温度の上昇率を感知する差動式と、一定温度(60~70℃)以上で感知する定温式があります。
火災では温度が上がるより先に煙が出るので、煙感知器のほうが早く火災を発見できます。
しかし、煙でなくても空気中の小さな粒子なら何でも感知してしまうので、台所や浴室のそばでは使えません。そのような場所では熱感知器を使用します。
直接火を使うキッチンなどでは定温式感知器を使用します。

発信機
発信機
写真は能美防災㈱より
火災を発見した人が押しボタンを押すことにより火災を通報する装置です。
P型1級発信機:押しボタン、応答ランプ、電話ジャック
P型2級発信機:押しボタンのみ

火災受信機
火災受信機
感知器や発信機からの火災信号を受信し、主音響(ブザー)と地区表示により、火災の発生とその場所を管理者に知らせるとともに、建物内に設置された地区音響装置(ベル)を鳴動させ、避難と初期消火活動を促す装置です。
さらに、火災信号を受け、屋内消火栓のポンプを始動する、防排煙設備の防火扉や防火シャッター等を制御する、通報装置と連動し警備会社へ通報する等、他設備と連動するための信号も出力します。

システム全体に電源を供給する役割も担っており、平常時はAC100V商用電源で動作するが、停電に備えて一定時間火災の発生を警戒できるように予備電源(蓄電池)を内蔵しています。予備電源には寿命があり、5年前後に1度交換が電池メーカーにより推奨されています。

地区音響装置
地区音響装置
写真は能美防災㈱より
建物内の各所に配置され、受信機が受信した火災信号を受けて鳴動するベルで、建物全体に火災を知らせ、避難と初期消火活動を促します。

共同住宅用自動火災放置設備
技術上の設置基準については、消防庁告示第18号に定められています。
☞ 参考 能美防災㈱HP内ページ

☞ 具体的な操作方法 参考 SPnet HP内> 選任業務編

(2013.11)
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消防機関へ通報する火災報知設備について

電話回線を使用して消防機関を呼び出し、蓄積音声情報により通報するとともに、通話を行うことができる装置です。
この設備は火災の際引き起こすパニックのため、火災現場の住所等の情報を正確に伝達できないケースが多々発生しているので設置義務が生じました。

設置基準は消防法施行令第24条(消防機関へ通報する火災報知設備に関する基準)にありますが、マンションでは述べ床面積1,000㎡以上の場合に設置が義務付けられています。
ただし、その対象物が消防機関からの歩行距離が500m以下か、著しく離れている場所 (約10km)の場合や、消防機関へ常時通報することができる電話を設置したときは設置しないことが出来ます。
☞ 参考 東京防災設備保守協会HP>消防機関へ通報する火災報知設備※2022年現在ページ無し

(2013.11)
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誘導灯・誘導標識について

誘導灯は火災や災害時の避難行動において、その方向と避難経路の照度を確保するためのものです。
マンションでは、消防法施行令第26条の定めにより、地階・無窓階・11階以上の部分に設置することとされています。
また、設置場所や詳細な基準については、消防法施行規則第28条の3に規定されています。(設置間隔・明るさ・蓄電池により20分以上点灯することなど)
☞ 参考㈱西日本防災システム 
    誘導灯 消防法施行規則第28条 誘導灯設置基準一覧

誘導灯には、避難口誘導灯、廊下通路誘導灯、階段通路誘導灯があります。避難口誘導灯が緑地に白・通路誘導灯が白地に緑のマークです。

誘導灯
避難口誘導灯は、次のような場所の上部に設けられ、通路誘導灯は、そのような避難口にいたる廊下、通路に設けられます。
  1. 屋内から直接地上に通ずる出入り口及びその付室の出入り口
  2. 直通階段・直通階段の階段室及びその付室の出入り口
  3. 1・2に掲げる出入り口に通ずる廊下又は通路に通ずる出入り口
  4. 1・2に掲げる出入り口に通ずる廊下又は通路に設ける防火戸で、直接手で開くことができるもの(くぐり戸付き防火シャッターを含む)がある場所

「標識」はステッカータイプのもので、蓄電式のものもあります。
☞ 標識に関する参考 ㈱石井マーク商品ページ 

(2013.11)
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