マンションの防水工事



防水とは

防水とは、建物を雨漏りから防ぐために、建物の中に水が入りこまないようにする仕組みのことです。

マンションのような陸屋根は平らであるため排水しにくく、水がたまりやすくなっています。何らかの要因でコンクリートに亀裂が入ると、そこから水が浸水してしまうため防水層が必要となります。

防水とは
また、防水は、建物を雨漏りから防ぐだけでなく、建物の構造自体を守っています。
建物構造の代表である鉄筋コンクリート構造は、鉄筋が弱アルカリ性に覆われ、錆から保護されていますが、コンクリートの表層から空気中の炭酸ガスなどが侵入すると、化学反応により、コンクリートのアルカリ性は失われ(中性化)、内部の鉄筋は錆びやすくなります。
その結果、コンクリートが破損したり、コンクリート中の成分が染み出す現象(エフロレッセンス)が起こり、建物の劣化が進んでしまいます。
このような構造劣化を防ぐ意味でも、防水はとても重要な機能です。
中性化 参考:田島ルーフィング㈱発行「「防水」改修読本」
(2009.7)
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さまざまな防水工事(塗膜・シート防水・アスファルト)

防水工事にはさまざまな種類があり、用途に応じた工法で施工されています。

塗膜防水(塗る 工法)
現場で液状の防水材料を塗り、化学反応で防水の膜をつくります。
フェンスの基礎があって細かい作業が必要な屋根やベランダなど、歩行を伴う場所の防水に有効です。
現場施工のため、一定の厚みの確保が難しい面がありますが、さまざまな場所で施工できます。

塗膜防水
シート防水(貼る 工法)
ゴムや塩ビ(塩化ビニル)でできたシートを下地に貼りつければ完成します。
最大のメリットは簡便性です。
一方で外部損傷にやや弱く、施工管理がより重要になってきます。

シート防水
アスファルト防水(塗る・貼る 工法)
旧約聖書のノアの箱舟にも登場する、世界最古で最も信頼性の高い防水材料がアスファルトです。
液状の溶解アスファルトと、防水性の高いアスファルトシートを積層し、厚みのある防水層をつくります。二層以上の積層工法が原則で、水密性・耐久性とも高く、施工の不具合が出にくい工法です。
アスファルト溶融時に、臭いと煙が発生するため、近年の改修工事では作業環境に対応した工法で施工されています。
仕上げは、防水層の上をコンクリートで保護する押さえコンクリート仕上げと、砂の付いたシートで仕上げる露出仕上げの2タイプがあります。

アスファルト防水
参考:田島ルーフィング㈱発行「「防水」改修読本」
(2009.7) 
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塗膜防水の種類と工法

塗膜防水は、液状の樹脂・合成ゴムなどをハケやヘラ、ローラーなどで下地に塗布するか、あるいは吹付機により施工して成膜・硬化させ、シームレスな防水層を形成する工法です。
使用される材料としては、ウレタンゴム系が圧倒的に多くなっていますが、その他に、FRP系、アクリルゴム系、ゴムアスファルト系などの材料も使用されています。
このうち、アクリルゴム系の用途はほとんどが外壁防水で、ゴムアスファルト系は土木関連用途が多くなっていますので、塗膜防水と言えばウレタンか最近需要が伸びているFRPを指すことが多いようです。

ウレタンゴム系防水の工法には、緩衝用シート、補強布などと組み合わせて所定量の厚さに塗り付けて防水層をつくる塗布工法と超速硬化ウレタンを所定量の厚さに吹き付けて防水層をつくる吹付け工法があります。
塗布工法
塗布工法には、密着工法と緩衝工法があります。
密着工法
は、ウレタンゴム系塗膜防水材を塗布して補強布を張り付け、さらにウレタンゴム系塗膜防水材を塗り付けて所定の厚さに仕上げる工法です。
緩衝工法は、接着剤を塗布し、通気緩衝用シートを張り付けた後、ウレタンゴム系塗膜防水材を塗り付けて所定の厚さに仕上げる工法です。
《特徴》
露出仕上げで屋上の用途(歩行用、運動用など)に対応できるという特徴があるが、施工においては、下地の精度や施工時の天候などに厳しい要求条件があります。また塗膜の厚さ確保が非常に難しいなどの問題もあります。
吹付け工法
吹付け工法は、超速硬化ウレタンゴムを専用の吹付け機械を用いて、所要の厚さに仕上げる工法です。
《特徴》
露出仕上げで屋上の用途(歩行用、運動用など)に対応できるという特徴があります。使用する超速硬化ウレタンゴムは、文字通り瞬時にして硬化するため、塗布工法のように、硬化時間を必要としないため、外気温や天候によって品質性能が左右されることがありません。


田島ルーフィングでは、塗膜防水の工法を「通気緩衝シート複合工法」「繊維補強密着工法」「一般密着工法」に分類しており、「繊維補強密着工法」では以下のように解説しています。(図中の青い「オルタックスカイ」がウレタン系塗膜防水)

塗膜防水例

☞参考 屋上防水情報館>ウレタンゴム防水とは
     全国ポリルーフ工業会>塗膜防水材について
     田島ルーフィング>ウレタン系塗膜防水 
(2009.7)
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シート防水の種類と工法

シート防水は合成ゴム系や、塩化ビニル樹脂系の高分子材料をシート状にしたものを貼り付け防水層とします。
合成ゴム系
厚さ1.2〜2.0mm。軽量で柔軟性を有しているためS造など露出非歩行用に用いられる。
塩化ビニル樹脂系
厚さ1.5〜2.5mm。耐摩耗性があり、露出防水の歩行用として用いられることがある。
<写真/田島ルーフィングのビニル床シート>
ビニル床シート

<合成ゴム系の工法>
接着剤で下地に固定します。シート相互の接着は、接着剤・粘着テープによるのでアスファルトや塩ビのように溶融一体化しないといった特徴があります。(田島ルーフィング/加硫ゴムシート防水解説より)

<塩化ビニル系の工法>
接着工法
接着剤で下地に固定します。 シート相互間を溶融一体化できる、単層防水のため工期が短い、意匠性に優れるなどが挙げられます。
機械的固定工法
専用の固定金具を用いてシートを下地に固定する工法です。特徴としては、改修工事の際に下地の補修費が軽減できる、外断熱仕様が可能である、躯体にビスを打込む際に振動と騒音を発する、躯体に強度が求められる、歩行に適さないなどが挙げられます。

<写真/(上)田島ルーフィング・塩ビシート防水機械的固定工法解説より・(下) 屋上防水情報館の施工作業より>

機械式固定工法
機械式工程工法施工中

☞参考 田島ルーフィング>防水改修ほか
(2013.7)
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