管理組合の総会


総会に複数の案を提示し、その中から選択させる決議方法は可能か

総会へ議案を上程する際、「議案に賛成か反対か」ではなく「A案、B案のいずれかを選ぶか」といった複数案を提示する方法は可能か。

所見
一般的に、総会決議は、上程された議案に対する賛否を問うものであり、理事会は可能な限り結論をまとめ、ひとつの案に絞った形で提案すべきであろう。やむを得ず、複数の案を提示する場合、理事会としては、候補案に優先順位を付けられる程度まで議論を進めておくことが望ましい、また、事前に決議方法についても議案に記載の上、議場の承認を得ることが必要と考えられる。
もし、複数の候補案の中から選択する方式で決議する場合、以下の2通りの方式が考えられる。

1.候補案の優先順位に従って審議する方式
例えば、優先順位をA案→B案の順とした場合、第1号議案A案、第2号議案 B案として上程し、A案が可決された場合は、B案の審議をせず、A案で決定とする。
A案が否決された場合のみB案を審議し、B案も否決された場合は廃案とする。

2.候補案の中で最多得票を得た案に決定する方式
  1. はじめに、議案の決定方式(例:候補案の中から最多得票を得た案に決定する方式)について賛否を取る。
  2. 上記①が可決された場合に限り、決定された方式に沿って得票を行う。
    なお、議決権行使書にも、上記の手続きに従って記載ができるようにしておくことが必要である。
  3. 特別決議事項、または候補案の内容に大幅な差異があり後の紛争が予想されるような場合、本方式は慎重に取り扱うべきである。
    なお、決議の有効性に疑義を生ずる余地がないものとするためには、最多得票を得た案が総会の決議要件を満たしている事が望ましい。


☞参考 社団法人高層住宅管理業協会 平成20年度苦情解決事例集
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キッズルームを集会室に変更する場合の決議要件は?

あるマンションの管理組合では、子供の遊び場としてキッズルームを設けている。
今回、軽微な内装工事を行って、当該施設を集会室に用途変更することを検討している。この場合の総会決議は、普通決議で良いか?
尚、キッズルームの利用方法については、使用細則に規定している。

所見
標準管理規約では「敷地及び共用部分等は通常の用法に従って使用しなければならない」としており、使用細則で定めることのできる事項は、この「通常の用法」の具体的な内容である。
本件のように、工事内容が軽微なものであってもマンション共用部分の用途が変更となる場合には、特別決議によることが適切と思われる。
なお、単に使用制限を緩和し、キッズルームとしての用途の他に集会室としても使用することができるようにする場合等は、使用細則の改定として、普通決議で実施可能と考えられる。

☞参考 社団法人高層住宅管理業協会 平成20年度苦情解決事例集
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バルコニーを禁煙とする場合の決議要件は?

あるマンションの管理組合では、理事会で、バルコニーを禁煙とすることを検討している。使用細則の禁止事項に追加するための総会決議は、普通決議で良いか?

所見
一般的にマンション共用部分の使用方法は、使用細則で定めることのできる事項である。また、建物の使用に関する使用細則の変更は、普通決議で実施可能である。
本件においても、普通決議で実施することは可能と思われる。
留意事項として、本件は、一般的な制約事項と比較し、強い反対があることも想定されるため、管理組合としては、事前のアンケート調査等、組合員の意見を十分に集め、慎重に検討を進めることが望ましいと思われる。
規約変更に準じて特別決議で付議することも考えられる。

☞参考 社団法人高層住宅管理業協会 平成20年度苦情解決事例集
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総会に理事長・副理事長が欠席となる場合、開催は可能か?

あるマンションの管理組合総会において、理事長・副理事長とも欠席になった。総会の開催は可能か?

所見
管理規約に定める議長(理事長)及びその者に事故があった場合に代理となる者(副理事長)が共に欠席となることから、特別の理由がない限りは流会とし、再度総会の開催を行うべきである。

☞参考 社団法人高層住宅管理業協会 平成20年度苦情解決事例集
(2010.3) 管理組合の総会TOPに戻る

総会議事録への「署名押印」は「署名」のみで足りるか?

総会及び理事会の議事録署名人の定めについて、従来の「署名押印」から「署名のみ」に変更することは可能か?
所見
管理組合の総会議事録について、区分所有法第42条(議事録)第3項では「署名押印しなければならない」と定めており、本条は強行規定となるので、総会の議事録署名人についての規約変更は認められないと解される。
一方、区分所有法に理事会の定めは無いので、理事会の議事録署名人については「署名のみ」や「記名押印」等、任意に規約変更を行うことが可能と考えられる。
ただし、議事録署名人本人の特定するにあたり疑義を生じさせない意味において、総会議事録と同様に「署名押印」の方法を採ることが望ましいと考えられる。

☞参考 高層住宅管理業協会発行「平成23年度苦情解決事例集」
(2013.2)
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少数組合員(1/5以上)による総会の招集通知について

組合員数及び議決権の1/5以上の者が総会を招集する場合、1/5以上の者が連名で総会案内状を発送する必要があるか?あるいは1/5以上の者の代表者名のみで発送が可能か?

所見
区分所有法34条では、組合員数及び議決権を有する1/5以上の者は、管理者に対し総会の招集を請求することができ、管理者が一定期間内にこれに応じない場合は、自ら総会を招集することができると規定されている。
本状では、通知方法に関する定めはないが、1/5以上の者が、直接、招集通知を発送する場合、通知を受領する組合員は、1/5以上の要件を満たしているか、個々に確認することになる。そのため、代表者名のみの記載では不十分であり、連名での通知が必要と考えられる。

☞参考 社団法人高層住宅管理業協会 平成20年度苦情解決事例集
(2010.3) 管理組合の総会TOPに戻る

複数の議決権を保有する者の議決権分割行使は可能か?

管理組合で1住戸1議決権と定めている。
通常総会の開催にあたり、2住戸(2議決権)を所有する組合員から、ある議案について、所有する議決権を分割し、2人の代理人を立てたい旨の要望があった。理事長はこれを認めてもよいか?

所見
区分所有法では本件に関する明確な規定はないが、議決権の行使は、総会議案に対する組合員個人の意思表示であり、1人の組合員の意思は、議決権の保有数にかかわらず統一された1個のものであるべきと思われる。
区分所有法第39条(議事)では「この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する」としているが、これは管理組合が区分所有者の集合体であることから、共同の利益を維持する上で、持ち分割合のみならず構成員の数をも考慮することとしたものである。
議決権の数に応じて複数の代理人を認めた場合、議決権数と組合員数が事実上の同義となり、上記の趣旨が損なわれることとなる。
また、区分所有法第40条(議決権行使者の指定)では共有者は議決権を行使すべき者1名を定めなければならないとしており、同法においても、議決権の分割行使は想定していないと考えられる。
以上の点を考慮すると、1人の組合員が自己の所有する議決権を分割し複数の代理人を立てることはできないと解すべきである。

☞参考 マンション管理業協会 平成23年度苦情解決事例集
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